SIerとウェブ系の「技術力を活用する機会」の違い

SIerにいた頃は技術力を必要とされる機会はあまりありませんでした。

 

こういうことを書くと、SIerで「自分たちはすごい」と思い込んでいる方々から

 

「いやいや、SIerでも技術力必要だから!お前のレベルが低かっただけだろ」

 

とツッコミが入るかもしれませんが、私はSIerの中では技術がわかっている方だったと思います。

 

私のレベルが高かったのではなく、SIerの中の人達の技術レベルが理系の女子大生以下だっただけです。

 

SIerで求められるのは、「問題を解決できる人に仕事を振る旗振り役」です。

 

適切な人を見つけ、適切な人を動かせるように調整するのが仕事です。

 

技術的な問題を自分で解決しようとする人は異端児扱いされますし、SIerではそういうスキルは求められていません。

 

問題の内容を理解し、対応の方針を定めて、解決できる人に仕事を振る。

誰かに振った仕事の成果を確認し、評価するのがSIer社員の業務です。

 

また、問題解決のプロセスも重厚で、勝手に手を動かすことは推奨されません。

 

 まずは課題内容を整理するための資料を作り、上司に説明し、チーム内で「レビュー」という名の「議論」を行います。

 

技術的な内容を全く知らない上司に

 

「どうするの?いつまでにやるの?誰がやるの?責任の範囲は?」

 

ことをしつこく聞かれ、それらに全て答えなければいけません。

 

SIer社員は議論が仕事です。

とにかく議論好きです。

 

反対に手を動かすのが嫌いな人が多く、議論して相手を論破し、誰かに仕事をやらせて、成果を承認するのがSIer社員の仕事の進め方です。

 

マウントを取り、上から誰かを制圧し、駒のように動かし、評価するのを好む人が多いです。

 

SIerで発生する技術的な課題

SIerでは技術的な課題にぶつかって何かを解決する...というよりは、スケジュールなどの問題の方が多々発生するのですが、それでもたまには技術的な問題が発生します。

  • 以前のバージョンのCOBOLで動いていたのに、基盤更改プロジェクトでCOBOLのバージョンを変えたら動かない。
  • マイグレーション対応を行ったら以前のものと挙動が異なる理由がわからない
  • なぜか夜間バッチが落ちてしまう
  • なぜか高負荷でアプリが落ちてしまう

障害対応であったり、「以前と同じ挙動をさせたいのにうまくいかない理由を探せ」みたいな仕事が多いですね。

 

他社が開発したライブラリを使用している場合は、SIer社員の仕事は「問い合わせ」だったりもします。

SIerで使われている技術はあまりにも古く、またSIer系の人は情報発信に消極的なため、問題解決の方法がウェブに出てきません。

 

なので、問い合わせフォームからメールを送り、有償のアドバイザー費用を払い、誰かに聞きます。 

 

社内フレームワークを管理する社内の部署の何者かにお金を出して聞くこともあります。

大企業では社内の部門間でお金を払い合っているのです。

 

「同じ会社だから」という理由で助け合うことはありません。

 

ちなみに技術的な課題に実際に対応するのは協力会社の社員の方です。

 

大手SIerの社員は問題解決の結果を見るのであって、解決のために試行錯誤はしません。

 

「問い合わせ」はしても「対応」はしません。

 

 

SIerの社員は自ら手を動かしていると、それはそれで「職務を全うしていない」とみなされます。

 

私がSIerで働いていたときによく言われたのは

 

「俺たちは単価が高い。高い単価に見合う仕事をしなければならない。手を動かす仕事は高単価の社員の仕事ではない」

 

というセリフです。

 

SIerでは手を動かしている社員はサボっているのと同じなのです。

異論は認めません。

 

ウェブ系では技術力が業務に直接つながる

ウェブ系では技術的な課題を解決するのが社員の業務です。

パートナー企業であったり、外部委託がないわけではありませんが、難しい課題は自分たちで対応します。

技術のコアな部分は自分たちが持っていたいからです。

 

アドバイザー的な役割を期待して外部メンバーにプロジェクトに参画してもらうことはありますが、

 

「技術的なことは外部に丸投げ、自分たちは上流工程だけやればいい」

 

というような考え方の人は誰一人としていません。

本当に一人もいません。

 

技術力が自分たちの競争力に直結しているからです。

 

また何か新しいことをやろうとするたびに外部に依頼していたのでは、スピード感のある開発ができません。

 

仕様を定めて、RFPを作って、ベンダーを探して、業務を委託し、成果物を受け取る...みたいなプロセスは割と時間がかかります。

 

うまく外部ベンダーを使うことができればいいのですが、外部ベンダーに丸投げしていると、自分たちでは何もできなくなってしまいます。

 

そのため、ウェブ系企業では自分たちの業務アプリケーションのコアな部分は外注しません。技術の流出を防ぐ意味もあります。

 

ウェブ系の企業でも日々課題は発生します。

その課題の多くは技術的なものです。

 

皆、問題に向き合い解決しようとしています。

 

ウェブ系でぶつかる課題は、解決自体が自らの技術的なスキルにつながるものが多く、COBOLのバグに四苦八苦していたSIer時代に比べてはるかに課題に対応するモチベーションが上がります。

 

自分がプライベートで学び、勉強しておけば、業務での活躍につなげることもできます。

 

技術で何か問題を解決し、価値を生み出し、それを自らのスキルにつなげたい人はウェブ系企業で働くのをおすすめします。

 

手を動かすのが嫌いで、人に指示をして、旗を振る役が好きな人はSIerに行きましょう。

ただし、SIerでは年功序列が非常に厳しいので、下働き期間はとても長くなります。

 

実力よりも年次が大事な世界なのです。