【感想】しまぶーのIT大学の「SIer論」で決定的に間違っているところ

「しまぶーのIT大学」という吉沢亮似のイケメンがIT業界を語るYouTube番組がある。

 


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彼はたびたびSIerをディスっていて、言っていることは概ね正しい。

SIerはクソで、技術力が身につかず、会議ばかりしていて、仕事がつまらない。

 

まともな人間が目指すべき業界ではない。

IT未経験者が「踏み台」として利用するのが正解だ、というしまぶーの見解は正しい。

 

だが、しまぶーが決定的に間違っている点がある。

 

給料だ。

 

しまぶーは動画でたびたび、「自社開発の方が給料が良い」と語っているが、「デタラメを言うな」と言いたい。

 

給料は圧倒的にSIerの方がいい。

 

笑っちゃうくらいSIerの方が給料が高い。

 

たとえば野村総合研究所という会社であれば、黙っていれば30歳には年収1000万を超える。

 

自社開発の日本企業で30歳で年収1000万を超える会社はあるだろうか?

 

日本の自社開発企業で30歳で年収1000万を超えるのはよほど特殊な人間だけで、外れ値といっていい。

 

NRIであれば新卒で入社すれば自動的に、平均的に年収1000万を超える。

NTTデータやNEC・富士通でも30代で年収800〜900万程度になるだろう。

 

自社開発の企業だと年収はガクッと下がる。

 

ウェブ系企業は年功序列ではないので年齢で年収は把握しづらいが、部門長レベルで年収800万くらいではないか。

 

一休やヤフーのような巨大企業であっても年収はSIerほど高くない。

というか、一休は年収が低くて有名なくらいだ。

 

年収は中にいる人材の優秀さとかに関係なく、業界の平均年収の水準で決まる。

 

同じSIerの人間でも転職してコンサル業界に行けば年収は上がるし、ウェブ系企業に入れば年収は下がる。

 

自社開発のウェブ系企業は業界の平均年収の水準がSIerよりも低いからだ。

 

業界の平均年収の水準は人材の売値の基準値である。

 

基準値が低いと、年収も低くなる。

外れ値は存在しても、平均値は業界の慣習で決まる。

 

上司よりも高年収で入社する社員など存在しないからだ。

 

SIerがなぜ年収が高いのかというと、業界の平均年収が高い上に、なんだかんだで受託開発は儲かるからだ。

 

 

 

SIerの受託開発は「ツイッターでよく見る情弱からぼったくる情報商材屋」の巨大版だと思えばいい。

 

情報商材屋がめちゃくちゃ儲かるように、IT弱者から金をむしれば儲かる。

 

IT弱者から金をぼったくり、仕事は下請けに投げて中抜する、というビジネスモデルは、中で働く人間からするとクソだが、経営としては非常に安定して利益が出る良いモデルだ。

 

競合が多く、利益を削り合う自社開発よりも利益を出しすいのである。

 

 

ところで、就活生も馬鹿ではない。

 

いたるところでSIerがディスられているにも関わらず、たくさんの若者がSIerを目指すのは、ネームバリューがあって給料が高いからだ。

 

SIerが大手ウェブ系企業よりも年収が高い傾向は、2020年代では変わらないままだろう。2030年代に入るとどうなるかわからないが。

 

若者は年収が高い業界を目指す傾向が強い。

年収が高い会社に入ると「すごい」と褒められるからだ。

 

「高い就職偏差値」の誘惑に抗って、「自分のやりたいこと」を選択できる学生は少ない。

 

だから高学歴の優秀層はSIerや商社、投資銀行、コンサルティング会社、そしてGoogleを目指すのである。

 

しまぶーが絶賛するウェブ業界も最近は魅力が増してきたのは間違いないが、たとえば東京大学でコンピューターサイエンスを学んだ優秀な学生が三菱商事とヤフー両方から内定をもらったとして、ヤフーを選ぶ可能性は低いだろう。

 

東京大学でコンピューターサイエンスを学んだ優秀な学生は、つまらなくて退屈で会議が多く年功序列で終身雇用でネームバリューが高い三菱商事に入社するはずだ。

 

まぁ、しまぶーを擁護するならば、彼が「絶対避けろ!」と声高に叫んでいるのは多重下請け構造の下の方にいるSIerなのかもしれない。

 

多重下請けの下の方のSIerの業務は本当の本当にクソなので、絶対に避けなければならないが、そういう仕事はオフショアに回すようになっている。

 

単価が低く誰でもできる仕事は「日本人に頼む必要はない」となっているのだ。

 

誰でもできそうに見える仕事を中国人に回し、それらを延々と「管理」するのがSIerの仕事である。

 

どの立場だろうと、間違いなく仕事はつまらないしやりがいがないし面白くない。

 

給料。

 

高い給料がもらえる。

 

それも、競争することなく、能力に関係なく。

 

この一点に限り、ウェブよりSIerを選ぶ価値はある。

 

そしてこの「給料」は、我々が生きていく上で、とてつもなく大切なものでもあるのだ。

 

余談だがこの記事を書いている途中、インスタを開いたらZOZOテクノロジーズが年収600〜1200万で求人を出していた。

 

ウェブの方も給料が上がってきているようだ。

まぁ、1200万は某大手SIerで30代半ば、総合商社なら30歳で到達する年収なのだが...。

 

ウェブだと「最優秀」で年収1200万。

SIerだと「凡人で無能」でも年収1200万。

 

給料が欲しい人にとってはSIerに入ってつまらない業務を我慢し、副業でプログラミングでもするのが最適解となってしまうだろう。