SIerとウェブ系の社内システムの違い

「社内システム」は会社それぞれなので、この記事の内容は読者の会社には当てはまらないかもしれません。

 

なので、タイトルは正確には

”私が見てきた”SIerとウェブ系の社内システムの違い」

となるでしょう。

 

といっても、やはり古くて大きい日本企業はどこも似たような感じな気もします。

 

まず社内システムが古いです。古くて使いづらい。

 

「古い」というのは、20年以上前に自社で開発した会社独自の社内システムを使っている、ということです。

 

私が働いていたSIerの社内ポータルサイトはユーザーインターフェースが前近代的で、2000年代初頭のヤフーのような見た目になっていました。

 

情報は全く整理されていないため、何かやりたいときはとにかく情報を探し回らなければいけません。

 

社内ポータルサイトの検索窓に欲しい情報を打ち込むと、訳のわからない謎のPDFなどがヒットして、目当ての情報は全く見当たりません。

 

パソコンが新しくなったときは、セットアップに丸一日以上かかります。

 

一方で、ウェブ系の社内システムは洗練されていました。

「洗練されている」というと、

 

「ウェブ系には技術力があって、必要な機能はどんどん自分たちで開発するから社内システムも使いやすいんだろうなあ」

 

と思われるかもしれません。

 

実際は全く逆です。

社内システムはビジネスの中核ではないので、自社で開発しません。

 

便利なクラウドサービスを駆使します。

 

勤怠管理や申請システム、経理や人事システムなど、全部クラウドサービスです。

 

それぞれのクラウドサービスは「自社のサービス」として使いやすさをどんどん改善していってくれます。

改善しないと他社に乗り換えられてしまうからです。

 

社内システムを「ユーザーとして」使うことで、日々アップデートするクラウドサービスの恩恵を受けられるのです。

 

SIerにいた頃は、よく自社のポータルサイトが止まったり、メンテナンスタイムが発生していました。

クラウドサービスではそのようなダウンタイムは基本、発生しません。

 

何千人といる社員が、使いづらい社内ポータルサイトのために膨大な時間を無駄にしています。

 

それでいて、自社の使いづらいサイトしか使ったことがないので、「自分たちがいかに無駄な時間を使っているか」に気付けません。

 

まさに

 

SIガラパゴス

 

です。

 

SIerの中で、独自の(非効率な)文化を発達させています。

こういう文化しか知らない社員は正直、不幸なようにも見えます。

 

生産性が低い業務を延々と続けていながらも、他社が見えないから低い生産性にも気づけないのです。

 

社内システム担当者を探す旅

以前、SIerで異動したタイミングでパソコンを買い換えることになりました。

リモートワークに対応するために、社内の「シンクライアントシステム」に接続できるパソコンを買おうとしたのです。


ちなみにVDIのRAMは当然4GBです。

 

SIerとウェブ系のパソコンのスペックの違い - SIerからウェブに転職した人の日記

 

パソコンのセットアップ方法は社内ポータルサイトを検索しまくってやっと見つかります。
わかりづらい手順を読み解き、手順通りにセットアップしなければいけません。


しかしながら、手順はだいたい陳腐化しているし、手順通りにやってもうまくいかないんですね。

結局、

「手順を実施するためには『チームのパソコン管理担当者』に連絡して、担当者から何者かに何らかの申請をしてもらわないと、シンクライアント環境は使えない」

 

ということが、新しいパソコンを買って1週間後に発覚しました(それまで古いパソコンを使っていました)

 

その一週間、誰かに聞いても「わからない」「若手の誰かに聞くしかない」みたいな返事しかなく、結局自分で当てずっぽうで担当者に頼んだら解決した、という形です。

 

こんなものはwikiのようなものを作って、誰もが参照できる形にして置いておけば済む話です。

 

「パソコンを買い換える」

「異動した人に必要な申請がある」

 

なんて作業は、今後永遠に発生し続ける定型作業です。

 

それらの定型作業のやり方がどこにもまとめられておらず、それに誰も疑問を抱かないのが不思議でした。

疑問を抱いたところで、社内システムを変更する方法は10年会社にいてもわからないし、一般社員が自由に書き込めて全社的に情報を共有できる場所は存在しないのですが。

 

そしてパソコンの申請であったり、複雑に縦割りされた社内ネットワークの利用申請であったり、そういうのは「若手の何者か」が担当するのですが、「誰が何の担当なのか」が「人に聞かないとわからない状態」なのも意味不明でした。

 

ウェブ系のパソコンセットアップ

社内の担当者の方が必要な分のセットアップをしてくれた状態でパソコンが届きます。

社内ポータルは最初からブラウザにブックマークされており、社内ポータルを上から見ていけば、「自分が何をすればいいのか」がわかります。

 

業務を始めるまでの余計なストレスがとても少ないことに、私は少なからず衝撃を受けました。

 

今までSIerで何をやっていたんだろう...と。

 

あんなにドキュメントを大切にしているSIerなのに、欲しいドキュメントは全く見つかりません。

フォルダを漁って見つかるのは、誰が作ったのかもわからないような、古いExcelファイルばかりでした。

 

このような、パソコンのセットアップや社内システムを見ても、「SIerの効率を重視しない姿勢」が浮き彫りになってしまい、少し悲しくなっていました。

 

SIerの中にも「非効率な業務体制」に疑問を持つ若手社員はたくさんいます。若手社員は決して馬鹿ではありません。

 

ですが、彼らが色々と頭を悩ませても問題は解決できないのです。

というのも、「もともと使っているもの」を変えるには色々と面倒な手続きや偉い人の説得が必要で、日々忙しすぎて、そんな大量の手続きをしている時間は取れないからです。

 

そうやって無駄を温存し、先延ばしし続けた結果、非効率が積もりに積もって、何をやるにも仕事が進まない状態になってしまったのがSIerの現状だと思います。

 

ちなみにフットワークの軽いウェブ系の企業だと、社内の共通ポータルを改善するのも簡単にできます。

 

誰でも善意で社内環境を良くしていくことができるので、非効率が温存されづらい状態になっています。

 

原則として、社員の善意を信じて会社が運営されているからです。

 

話が大きくなりますが、私たちの人生は有限です。

限られた時間を最大限有効に使っていかなければいけません。

 

社内の申請のために情報を探し回る

 

なんてのは無駄中の無駄、人生において何の生産性もない、頑張っても何も身につかない、誰も幸せにならないくだらない時間です。

 

そういう「無駄を強要される環境」からはできるだけ距離を置くのが幸せな会社員生活、ひいては幸せな人生につながっていくんじゃないかな、と思っています。