三菱商事の若手はなぜ、高年収を捨てて会社を辞めるのか?
ツイッターで三菱商事の待遇の素晴らしさが話題になっていました。
それと同時に、若手の退職も話題です。
それでも三菱商事から若手の流出が止まらないという方に注目すべき。無能な高給取りの中年に下らない仕事ばかり押し付けられたら、給料高くても他のチャンスを探す。日本の若者は捨てたものではない。 https://t.co/Csm287lhxf
— よみなお (@duckdog2000) April 16, 2021
三菱商事の素晴らしい安定性と待遇を蹴ってまで退職してしまう理由はなんでしょうか?
転職サイトに書かれている若手の不満を例にあげてみましょう。
組織体制は硬直気味。三菱グループの悪い文化は全て兼ね備えている。
若手に裁量を与える文化は全くといっていいほどない。
企業文化は古風。能力により評価の差がつかないため年長者であるだけで偉い(と勘違いしている)方も一部見受けられる。会社独自の文化や用語等も多い。
意思決定はトップダウンかつ重層的で責任の所在がわからないような作りとなっている。上層部は現場の理解があるとは言えない。
おっさんが意思決定を握っており、若手が主体的に仕事に取り組むのが難しい様子が見て取れます。
社内独自の文化が形成されていて、他社で通用しないガラパゴスの進化を遂げているようです。
責任が誰にあるかわからない。言い換えれば、誰もが責任を取らないように、あの手この手で責任回避を目論むような職場なのでしょう。
労働負荷・吸収できる知識の質や量において自分にとって不十分だった。
若手であっても仕事にオーナーシップを持って取り組むことは難しい。
たとえ雑用であっても合理的に意思決定に資するのであればそれは意義のあるものだが、実際現場の管理職はマネジメント層の実態を理解していない意向に振り回されておりそれに伴って作業を割り振られる状況。
商社に就職した若手が退職する理由はシンプルです。
つまらない。面白くない。やりがいがない。
これに尽きるでしょう。
外の人間に対してはキラキラに見せているが、社内で輝いた目をしている人はほとんどいないと感じた。
商社マンは就活生からは憧れの目で見られ、合コンでは「すごい!お金持ち!かっこいい!」と褒め称えられます。
とにかく「商社の人」というだけでモテます。ちやほやされます。
20代のうちにそんな風にチヤホヤされる環境を手放すのは難しいでしょう。
業務時間外は無双できるのです。
しかしながら、人生の多くを占めるのは「日中」です。
昼の仕事中は夜の繁華街のようにチヤホヤしてくれる人はいません。
日中はつまらない会議で一日を潰し、何をするにも仕事が進まず、意義の感じられない仕事で遅くまで残業しています。
商社に入る人の大半は、学生時代に優秀だった人たちです。
勝ってきた人です。
プライドが高く、自信もあります。
そんな人達が入社するとクソみたいな雑用をやらされ、頭が良いとは思えない上司の機嫌を伺い、何の価値を生み出しているかわからない業務で疲弊し、人生を無駄にしていくのです。
そこで彼らは思うのです。
「こんな仕事、続ける価値はあるのか?」
そこで彼らは葛藤します。
「この待遇を捨ててまで退職するのか...?
それとも退屈な日常は我慢して、高給でプライベートを充実させるか...?
どうする...どうする...?」
商社に選ぶような人は根っからのブランド志向です。
転職先は「やりたいこと」「面白いこと」よりも「他の人にすごいすごいと褒められる会社」を選びたがる傾向があります。
そういう人が選ぶのは外資系の有名企業であったり、投資銀行やプライベート・エクイティ・ファンドです。
年収が高くて、ブランド力のある会社を目指し、こっそりと転職を始めます。
女性は男に比べてブランド志向が薄い傾向があるため、スタートアップだったり、若くてまだ有名になっていない、でも創業者が魅力的な会社に転職していきます。
男は「ブランド企業に入って女にモテる状況」を捨てられないんですよね。
だから転職先もキラキラを目指します。
男はキラキラを目指し、女はやりがいを求めるのです。
とはいえ、8〜9割の商社マンは「辞めたいなあ」と思いながらも退職しません。
半年に一回ボーナスが入るたびに、「こんなにボーナスもらえるなら辞めないでええわ」となり、毎年昇給していくたびに、「また給料が上がった。辞めないほうがええな」と気持ちを新たに、つまらない日常を過ごす覚悟を決めるのです。
コロナが離職を加速させている
昨今のコロナ禍では夜遊びが禁じられています。
コロナにかかると職場に迷惑がかかるだけでなく、気まずくなります。
日系企業では気まずくなると職場に居づらくなるため、コロナは原則として敬遠されます。
一流企業の若手ほどコロナを警戒する傾向が強いともいえます。
そうなると、今までコリドーやら六本木やらでチヤホヤされてきた「商社ブランド」を実感する機会がありません。
「合コンでチヤホヤされるから楽しくて辞められない」といった「商社マンのヤリがい」が封じられ、毎日が退屈な業務だけになっていると、さすがに
「いや、こんな仕事やる意味ないやろ」
と思いを改めます。
合コンによってやる気を充填し、「こんなにモテるなら商社で頑張ろ」と思い直してきたのに、コロナ禍では充電の機会がないのです。
だから、離職者は増えます。
もともとブランドが好きで、ブランドが誇らしく、ブランドを自慢し、ブランドでモテるのが気持ちよくて商社を続けてきた人たちです。
コロナ禍のリモートワーク中ではTinderかペアーズでしかブランドを誇れません。
そういうわけで、今までよりは歯止めが効かない分、離職者は増えていきます。
それでも30代、40代になると転職で待遇を維持できなくなるので、だいたいの人は辞めずに我慢する道を選ぶんですけどね。
20代はまだ可能性がありますから。
辞めて新しいチャレンジに走る人は一定数出てきます。
若い時期の充実感はお金では買えないですからね。
高給でつまらない人生を送るか、薄給で充実した人生を送るかはトレードオフではなく、高給で楽しい人生を目指す人が増えたということです。